〜十六薙夜血プロローグ〜

 

 

離天京にある色町「是衒街」。

その裏路地で二人の男が

罵倒しあっている。

「お前は恐ろしい男だ。

そんな得体の知れぬ計画で、

よくも今まで俺たちを!」

「得体がしれない?

なんの事言ってんだよ

オマエさぁ・・・」

「とぼけるな!

裏で朧衆とつながって

何をするつもりだ!

奴ら三刃衆なんかと

つるんだら命が

いくつあっても足んねぇ。

やるならキサマ一人でやれ!」

そう罵倒した男の腹を、

もう一人の男が、その手に持つ

光物で、一瞬でエグッて引き抜いた。

「オマエが嗅ぎ回りすぎるから

こうなんだよ・・・。

もう生まれてくんな・・・」

ゆっくりゆっくりと

ノコギリ刃を引き抜く。

血の海に男の骸が一つ転がる。

ノコギリ刃の血をはらい、

男は夜の歓楽街へと消えていく。


この男、名を十六薙夜血といい、

色町中心に自警をする

侠客集団の表頭である。

いつも夜血が帰る場所は、

是衒街の郭でも評判一である

「那美乃」と云う太夫のもとである。


郭の部屋に上がるなり、

全裸になって布団へと

もぐりこむ夜血。

脱ぎ散らかした衣類を

一つずつ丁寧に、

那美乃がたたんでいく。

ふいと着衣の袖が湿っている事に

気づく。

「ねぇ、夜血・・・危ないことは、

あまりしないでね・・・」

那美乃の手に、そっと触れながら

夜血が云う。

「あぁ、何言ってんだよ、

心配すんな・・・。

オレちょっと休むわ」

そう寝返りをうった夜血の

瞳の奥では、三刃衆への

殺意と快楽がみなぎっていた。

 

 

 

 

 

 

 

光の聖霊ナコルル