〜九鬼 刀馬プロローグ〜

 

 

離天京の覇業三刃衆が住む

城郭の最上階。

月夜の光の下、

白い肌に赤眼の九鬼刀馬が、

剣気を放ち精神集中している。

その背後に忍び寄る影。


次の瞬間、

烈風のような直線的な突きが、

好々爺の寸前で止まっていた。

刀馬は表情を微動だにせず、

見下ろして好々爺に

言葉を吐き捨てる。

「キサマ、次は無いぞ」

この好々爺の正体は、

刀馬と同じく三刃衆の一人、

朧であった。

「ふぉふぉふぉ、そう怒られますな。

刀馬殿に良い知らせを

持ってまいった」

そう刀馬をいさめてから、

九葵蒼志狼が公儀隠密の命をうけ、

離天京に入ったとの報を伝える。


皆伝の太刀に隠されていた証文。

暁色の輝きを放つ己の愛刀と、

養父の実子・蒼志狼が持つであろう

もう一本の太刀。


奴なら証文の謎を知っているはず。

・・・色素欠乏という呪われた肉体

・・・陰惨で絶望的な幼少期


・・強さへの憧れ


・・・秘剣という希望の光

・・・強さへの執着


師である養父を殺す事さえ、

この心は厭(いと)わなかった。

その先に、最強のという

称号があるならば・・・

「蒼志狼・・・オマエが来ずとも、

この俺から出向いてやる」

 

 

 

 

 

 

 

光の聖霊ナコルル