〜乱鳳プロローグ〜

 

 

欲望と快楽が渦巻く街、「是衒街」。

この街から多くの恐怖と殺意が

排出されるが、その中に「子鬼」

と呼ばれる孤児がいる。

「乱鳳」と「眠兎」と呼ばれる

兄弟のような“二匹”である。


ろくな教育や躾など

受けておらず、

善悪の区別など無く、

生きる為の本能と経験に従い

行動する。

甘く見てかかった大人達は、

ことごとく地に転がされた。


その二匹を最近見かけなくなった。

特に、妹分の「眠兎」は

まったく見かけなくなった。

片や乱鳳の方は見かけるには、

見かけるのだが・・・。


決まった日暮れ時に、

街へ姿をあらわす乱鳳。

やはり、今日も定刻に

姿をあらわした。

そこら辺のならず者を

4〜5人締め上げ、

火の見櫓(ひのみやぐら)へと登り、

周りをぐるりと見渡して、

一緒に登らせたならず者に向って

「一番声が低い奴は、

ここから落とすからな。始めろ!」

大人達が一斉に声を振り絞って、

「眠兎ちゃ〜ん、出ておいで」と

何度も叫び続ける。


声の潰れた者から順に

空を泳いでいく。

最後まで叫び続けた一人が

地面に泳ぎ着いた時、

夕暮れの空へと

乱鳳が消えていく。

乱鳳の眠兎探しの日々は続く。

 

 

 

 

 

 

 

対 花房迅衛門