〜榊 銃士浪プロローグ〜

 

 

城下の外壁にかかる掛け橋の上で、

二人の侍がすれ違おうとしていた。

「行けば死ぬぞ」

「十四郎、

オヌシが守ってくれるではないか」

すれ違いざまの言葉を残し

互い方向へと歩いていく。


それから半刻後、その答えは出た。

「まて!死ぬな!!・・・」

「これでよい・・・

私は・・・本望だ・・・

十四郎・・・十四郎・・・・・・」

(なぜだ?!なんの意味がある!

何の為に死ぬ・・・)


女は、うなされている男を

揺り起こしていた。

男が悪夢から醒めて、

その視線の先に

おぼろげに見る女の顔・・・

美しい青い瞳。

「・・・銃士浪、大丈夫なの?

・・・なによ?

私が天女にでも見えた」

「・・・すまん。

只なんとなく、

昔の知り合いに似てたんでね」

「あら、じゃあ飛び切りの

イイ女ね」

「悪いがそいつは、

かたぶつの侍だ」

「なっ!・・・侍って、

て事は・・・男!

ちょっと何処行くのよ?」

問い掛けるサヤに

振り向くことなく銃士浪がいう。

「立ち止まっちゃいられねぇんだよ、

オレは」

飄々とした後ろ姿をみせたまま、

銃士浪は木漏れ日の中へ消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

光の聖霊ナコルル