〜七坐灰人プロローグ〜

 

 

この男、離天京にある

色町「是衒街」を仕切る

侠客集団の裏頭である。

呼び出された野原に行くと、

ならず者達の群れが男を囲んだ。

多勢と云う状況に勝利を確信し、

薄笑いを浮かべるならず者達。


冷やかな灰人の瞳が、

囲んだならず者達を見ている。

デジャビュが灰人を襲う。

・・・幼少の記憶

・・・異人・・・女郎

・・・どっちつかず・・・灰色

・・・ネズミ・・・嫌悪


・・・猫に弄られる鼠

・・・流れる血


・・・赤・・・赤・・・赤・・・

灰人の中で心の糸がキレた。

同時に、凄まじい速さの

逆手居合いが連斬されてゆく。


残ったのは、ならず者の頭が一人。

血の海のなか、息を切らす灰人は、

懐から取り出した秘薬を噛んだ。

すると乱れた呼吸が、

嘘のように戻っていく。

灰人の表情が恍惚へと変わる。

最後の一人に向かって、

狂ったように叩き付ける居合が

繰り出された。


赤い雨が降る。

舞い散る血飛沫に、

再びデジャビュが灰人を襲う。

・・・至高の赤・・・矛盾

・・・最近見た赤・・・白い肌の男

・・・己を見下した真紅の瞳・・・

「驕るな!」

ギラギラと光るその目には、

もはや目の前の屍の姿など

映ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

光の聖霊ナコルル